外資系の予算・フォーキャスト英語|FP&A・経営企画の実務表現
本社との予算会議に出ると、日本語なら3秒で言える内容が英語だと出てこない。売上が計画に届かなかった理由も、来期の見通しも、頭の中では整理できているのに、英語にした瞬間に説明が長くなって、途中で相手に引き取られてしまう。外資系の経理や経営企画で英語を使う方から、この話はよく聞きます。
原因は語彙ではありません。予算とフォーキャストの英語は、使う単語が数十語に限られている代わりに、報告の順番と一文の組み立てがかなり固定されています。その型を持っていないと、知っている単語を並べているのに要点が伝わらない状態になります。
予算の英語が特殊なのは「同じ日本語に複数の英語がある」から
日本語では「予算」「計画」「見通し」「着地」がかなり曖昧に混ざります。英語ではこれらが別の言葉で、指している時点も違います。ここがずれたまま話すと、相手は数字そのものを信用しなくなります。私が経営企画の実務で最初に固定したのも、この使い分けでした。
| 英語 | 指すもの | 日本語での言い方 |
|---|---|---|
| budget | 期初に承認された数字。期中は動かさない | 予算 |
| forecast | 今わかっている情報での着地見込み。毎月更新する | フォーキャスト、見通し |
| actual | 実績値 | 実績 |
| variance | 実績と予算の差、または見通しと予算の差 | 差異、予実差 |
| run-rate | 直近の水準を年換算した数字 | 年換算ベース |
| YTD(year to date) | 期初から当月までの累計 | 期初来累計 |
| full-year / FY | 通期 | 通期 |
| phasing | 年間の数字を月次に配分すること | 月次按分 |
| bridge | 2つの数字の差を要因別に分解した説明 | 要因分解 |
| headcount | 人員数(人件費の前提として使う) | 人員数 |
特に事故が起きやすいのが budget と forecast です。日本語で「予算を見直しました」と言うつもりで We revised the budget. と言うと、承認済みの数字を勝手に書き換えたという意味になります。正しくは We updated the forecast. です。会計用語そのものに不安がある方は、金融・会計の英語用語一覧で土台を作ってから読むと入りやすくなります。
予実差異の説明には一文の型がある
予算会議で聞かれることは、実際にはほぼ1つです。「どこがいくらずれて、なぜか」。この答えは英語では次の順番で組み立てます。何がずれたか、いくらか、方向、そして理由です。
[項目] came in [金額/率] [above / below] budget, driven by [理由].
例:"Revenue came in 4% below budget, driven by slower deal closings in Asia."
→ 売上は予算比4%未達。アジアでの受注ずれ込みが要因。
上振れなら came in above budget、要因が悪い方向なら driven by ではなく due to や impacted by を使います。
この型が強いのは、金額と理由の順番が固定されているからです。理由から話し始めると、相手は結論が出るまで待たされます。数字を先に置いて、そのあとに driven by で理由をつなぐと、聞き手は最初の3語で良し悪しを判断できます。増減率や桁の言い方でつまずく場合は、million・billionの変換と決算数値の言い方を先に固めておくと、この一文がそのまま口から出るようになります。
見通しを説明するときの言い方
フォーキャストは断定できないので、確度を言葉で調整します。よく使うのは次の3段階です。
- We expect to land at 120 million for the full year. 通期は1.2億で着地する見込み(標準的な確度)
- We're tracking slightly ahead of budget. 予算をやや上回るペースで推移(まだ幅がある)
- We see a risk of missing the full-year target. 通期目標未達のリスクがある(悪い話を早めに出す)
3つ目は言いにくい内容ですが、英語の予算会議では悪い数字を先に出す人ほど信用されます。risk という語を使えば、確定した失敗ではなく管理下にある論点として扱えます。
用語より効くのは、どこを強く言うか
ここが実務で一番差が出ます。予算会議の英語は単語が短く、一文も短いので、語彙で困ることはあまりありません。それでも伝わらないとしたら、たいていは全部を同じ強さで読んでいるからです。上の例文でいえば、聞き手が拾いたいのは 4%、below、slower closings の3か所だけです。ここを強く長く、残りを軽く流すだけで、同じ文が急に頭に入るようになります。
練習は、新しい表現を増やすことより、手持ちの一文を強弱をつけて言い直すことに時間を使ってください。目安として、練習時間の7割はリズムと強弱に配り、個々の子音や母音の作り方は残りの3割で十分です。目指すのはネイティブと同じ音になることではなく、数字と理由が一度で伝わる話し方です。
自分の直近の予実報告を英語で3文だけ書き、強く言う語に下線を引いてから録音します。聞き返して、下線の語が本当に浮き上がっているかを確認します。浮いていなければ、その語を1.5倍の長さで言い直します。これだけで印象は変わります。
会議全体での発言の組み立て方は英語会議のフレーズと聞き取り戦略に、数字と理由をセットで示す型のより広い応用はIR英語の話し方にまとめています。
資料の英語は短く、口頭は補う
予算資料のスライドやExcelのラベルは、文ではなく名詞で書くのが標準です。Actual vs Budget、FY26 Forecast、Variance Bridge のように短く置きます。日本語の資料に慣れていると説明を書き込みたくなりますが、英語の資料では書き込むほど読まれなくなります。文字で説明する分は口頭に回す、という分担が前提です。
その口頭部分で使う数字の読み上げは、財務諸表の構造がわかっているほど速くなります。勘定科目の並びが不安な方は英文財務諸表の読み方を参照してください。FP&Aという職種そのものの役割や日本の経営企画との違いは、FP&Aとは何をする仕事か(日本語解説)で扱っています。
まとめ
- budget は期初の承認値、forecast は毎月更新する見込み。混ぜると数字の信用を落とす。
- 差異の説明は「came in ○% above / below budget, driven by ~」の一文の型で足りる。
- 数字を先、理由をあとに置く。理由から始めると結論が遅れる。
- 悪い見通しは risk という語で早めに出すほど信用される。
- 練習の7割はリズムと強弱に。拾ってほしい3語を浮かせれば同じ文が伝わる。
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