英文財務諸表の読み方|BS・PL・CFの英語勘定科目と日本基準との違い
海外子会社の月次が英語で回ってきた。買収候補のAnnual Reportを渡された。日本語の決算書なら30分で読めるのに、英語になった途端に手が止まる。この状態は、英語が読めないから起きているのではありません。日本語で読むときに使っている「どこを見るか」の順番が、科目名が英語になった瞬間に使えなくなるからです。
英文財務諸表でつまずく原因は、だいたい3つに絞れます。勘定科目の対訳を知らない、表の並び順が日本の決算書と違う、そして日本基準にあって英語圏にない概念がある。どれも語学の問題ではなく、対応表と構造の話です。順に片づけていきます。
まず単位と通貨を確認する
本文に入る前に、必ず表頭を見てください。(in millions of USD) や (JPY in thousands) と書かれています。ここを見落とすと、桁を1,000倍間違えたまま議論に入ることになります。実務で起きる事故は、専門用語が読めないことよりも、この一行を飛ばしたことで起きます。
数字を英語で口に出す段になって止まる人は、英語の数字が出てこない人へ|million・billionの変換と決算数値の言い方もあわせてどうぞ。読むときと話すときで、つまずく場所が違います。
貸借対照表(Balance Sheet)の勘定科目
| 日本語 | 英語 | 補足 |
|---|---|---|
| 流動資産 | Current assets | 1年以内に現金化する資産 |
| 現金及び現金同等物 | Cash and cash equivalents | 会話では単に cash |
| 売掛金 | Accounts receivable / Trade receivables | 略して AR。IFRSでは trade receivables が多い |
| 棚卸資産 | Inventories | 単数形の inventory も使う |
| 前払費用 | Prepaid expenses | 先に払って未消化のもの |
| 有形固定資産 | Property, plant and equipment | PP&E(ピーピーアンドイー)と読む |
| のれん | Goodwill | 買収価格と純資産の差額 |
| 買掛金 | Accounts payable / Trade payables | 略して AP |
| 未払費用 | Accrued expenses | 発生済みで未払のもの |
| 短期借入金 | Short-term borrowings / Short-term debt | 1年以内返済 |
| 純資産 | Equity / Net assets | 会話では equity |
| 資本金 | Common stock / Share capital | 米国は common stock、英・IFRSは share capital |
| 資本剰余金 | Additional paid-in capital / Share premium | 払込超過額 |
| 利益剰余金 | Retained earnings | 過去の利益の累積 |
| 自己株式 | Treasury stock | マイナス表示になる |
売掛金と買掛金は、会議で最も略語のまま飛び交う科目です。"AR is up 12%" と言われて一拍遅れると、そこから先の話に乗り遅れます。文字で覚えるだけでなく、エーアール・エーピーと音でも結びつけておいてください。
損益計算書(Income Statement)の勘定科目
| 日本語 | 英語 | 補足 |
|---|---|---|
| 売上高 | Revenue / Net sales | top line とも呼ぶ |
| 売上原価 | Cost of sales / Cost of goods sold | COGS(コグス) |
| 売上総利益 | Gross profit | 粗利率は gross margin |
| 販売費及び一般管理費 | Selling, general and administrative expenses | SG&A(エスジーアンドエー) |
| 営業利益 | Operating income / Operating profit | EBIT とほぼ同義で使われる |
| 支払利息 | Interest expense | 受取利息は interest income |
| 税引前当期純利益 | Income before income taxes | pre-tax income とも言う |
| 法人税等 | Income taxes | 実効税率は effective tax rate |
| 当期純利益 | Net income | bottom line とも呼ぶ |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | Profit attributable to owners of the parent | IFRSの表記。連結で必ず出る |
| 非支配株主持分 | Non-controlling interests | NCI。旧称は minority interests |
用語そのものをもっと広く押さえたい場合は、金融・会計の英語用語一覧|ファイナンス実務で使う英語の勉強法に実務の頻出語をまとめています。
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)の勘定科目
| 日本語 | 英語 | 補足 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュフロー | Cash flows from operating activities | 会話では operating cash flow、OCF |
| 減価償却費 | Depreciation and amortization | D&A。有形が depreciation、無形が amortization |
| 売上債権の増減 | Changes in trade receivables | increase/decrease in で書く場合もある |
| 投資活動によるキャッシュフロー | Cash flows from investing activities | 投資CF |
| 設備投資 | Purchases of property, plant and equipment | 会話では capex(キャペックス) |
| 財務活動によるキャッシュフロー | Cash flows from financing activities | 財務CF |
| 配当金の支払額 | Dividends paid | 自社株買いは purchase of treasury stock |
日本の決算書と構造が違う3点
1. 経常利益に当たる段がない
日本のPLは、営業利益の下に経常利益があり、その下に特別損益があります。英語圏のPLにこの段はありません。日本企業の英文開示では ordinary income や recurring profit と訳されていますが、これは日本基準を英語に置き換えただけの用語で、米国基準やIFRSの決算書には出てきません。「経常ベースで見ると」という日本語の議論を、そのまま英語の相手に持ち込むと通じないのはこのためです。英語で話すときは operating income か net income のどちらかに寄せて説明したほうが早いです。
2. のれん償却の行がない
日本基準ではのれんを規則的に償却するので、PLに「のれん償却額」が並びます。米国基準とIFRSはのれんを償却せず、毎期の減損テストで評価します。ですから英文PLに amortization of goodwill を探しても見つかりません。代わりに、減損が起きた年だけ impairment loss が突然大きく計上されます。前年比で利益が急落しているときは、まずここを疑ってください。
3. 並び順が逆のことがある
米国基準のBSは流動資産から始まります。一方、IFRSを採用する欧州企業などでは、非流動資産(Non-current assets)を上に置く形式が普通に使われます。同じBSでも上下が反転しているので、見慣れた位置に見慣れた数字がなく、それだけで読めない気がしてしまいます。書式が違うだけで、中身は同じです。
(1) PLの Revenue、Operating income、Net income の3行。
(2) CFの Cash flows from operating activities と capex。
(3) そのうえでBSの Cash、Debt、Equity。
この5〜6個の数字を先に拾えば、細かい科目が読めなくても会話には入れます。全部を頭から訳そうとするから終わらないだけです。
そもそも3表の関係を日本語で復習しておきたい方は、姉妹サイトの財務三表の読み方(日本語)を先に読んでおくと、英語版が一気に楽になります。
読めることと、話せることは別
ここまでは読む話でした。ただ実務で困るのは、読めた内容を英語で説明する場面です。対訳を覚えても、口に出す段になると詰まる。理由は、財務の説明が長い文になりやすく、どこを強く読むかで意味が変わるからです。
たとえば "Operating income was down 8%, mainly due to higher SG&A." という一文では、down 8% と SG&A を強く、少し長めに読みます。ここを平坦に流すと、相手は数字も原因も取り逃します。個々の音を作り込むより、強弱と間を整えるほうが、財務の説明ははるかに伝わります。練習時間の配分でいえば、発音の作り込みに3割、リズムと強弱に7割で十分です。目指すのはネイティブのような発音ではなく、一度で伝わる説明です。
投資家や本社への説明の型は、IR英語の話し方|決算説明会とQ&Aで投資家に伝える表現で扱っています。
まとめ
- 英文財務諸表が読めないのは英語力ではなく、科目の対訳と並び順を知らないだけ。先に単位と通貨を確認する。
- 日本基準との違いは3点。経常利益の段がない、のれん償却の行がない、BSの並び順が逆のことがある。
- 読む順番はPLの3行、CFの2行、そのあとBS。全部を頭から訳さない。
- 説明する側に回ったら、強弱と間で決まる。数字と原因を強く、少し長めに。
英語の「印象」を変えるオンラインコース
Udemyコース「グローバルなビジネス環境で正しく評価されるための英語戦略」。この記事で扱った強弱とリズムは、コースの中核テーマです。発音・リズム・自分らしさの3要素で、日本人の英語の印象を変えます。講師はINSEAD MBA修了、シンガポール在住の元外資系企業本社 経営企画グローバル責任者。30日間返金保証つき。
Udemyでコースを見る