英語の音の連結(リエゾン)と脱落|知っている単語が聞き取れない理由
会議の録音を聞き直したら、聞き取れなかった箇所が全部知っている単語だった。そんな経験はないでしょうか。文字で見れば中学レベルの英文なのに、音になると別物に聞こえる。これは語彙力の問題でも耳の問題でもありません。単語が文の中で音を変えることを学んでいないだけです。
この現象をまとめて音声変化と呼びます。代表格が音の連結(リエゾン、英語ではlinking)と脱落です。英語が聞き取れない原因を4つに分解した記事では、この音声変化を最初の関門として挙げました。今回はその中身を具体的に見ていきます。
音声変化は「なまけ」ではなくリズムの結果
よくある誤解は、ネイティブが速く雑に話すから音が消える、というものです。順序が逆です。英語は強く長い音節と弱く短い音節の差が大きい言語で、弱い部分を短く圧縮しないとリズムが保てません。その圧縮の副産物として、音がつながったり消えたりします。
つまり音声変化はリズムの結果です。だから、単語ひとつずつの発音を磨いても聞き取れるようにはなりません。逆に、リズムの型が体に入ると、初めて聞く文でも音の変化を予測できるようになります。
音声変化の5つの型
複雑に見えても、実務で出会う音声変化はほぼ次の5つに収まります。
| 型 | 何が起きるか | 例 |
|---|---|---|
| 連結(リエゾン) | 子音で終わる語と母音で始まる語がつながる | check it out → チェッキラウ |
| 脱落 | 語尾の破裂音(t/d/p/b/k/g)が消える | next month → ネクスマンス |
| 同化 | 隣り合う音が影響し合って別の音になる | did you → ディジュ |
| 弱形 | 機能語が短く曖昧な音になる | can → クン、for → ファ |
| フラップ | 母音に挟まれたtがラ行に近づく(主に米語) | later → レイラー |
この5つを知っているだけで、「聞こえなかった」が「今のは脱落だ」に変わります。原因が特定できる音は、次に聞いたとき拾えます。
ビジネスの場で頻出する実例
会議で毎日のように出てくる組み合わせを表にしました。右列は正確な発音記号ではなく、日本語話者が音の塊をつかむための近似です。
| 文字 | 実際の聞こえ方 | 型 |
|---|---|---|
| want to | ウォナ | 同化 |
| going to | ガナ | 同化 |
| got to | ガラ | フラップ |
| a lot of | アロラヴ | 連結+フラップ |
| kind of | カインダ | 脱落+弱形 |
| let me know | レミノウ | 脱落 |
| hold on | ホウルドン | 連結 |
| what do you think | ワルユスィンク | フラップ+弱形 |
| as soon as possible | アスーナズパッサブル | 連結 |
| first of all | ファースタヴォール | 連結 |
| an update on that | アナップデイロンナッ | 連結+フラップ+脱落 |
| I'll get back to you | アイゲッバックトゥユ | 脱落 |
最後の2つのように、1つのフレーズで複数の型が同時に起きるのが普通です。だから単語単位で追いかけると崩れます。聞くべき単位はフレーズです。
脱落は「消える」のではなく「置き換わる」
脱落を理解するうえで大事な点があります。語尾のtやdは、完全に無になるわけではありません。息を止める一瞬の間として残ります。next monthのtは、発音されないかわりに一拍の空白になります。
ここを勘違いすると、自分が話すときにその一拍まで省いてしまい、かえって通じにくくなります。音は省略しても、拍は省略しない。これが話す側のルールです。
練習法:音ではなくリズムから入る
音声変化の一覧を暗記しても、聞き取りはほとんど改善しません。表は地図であって、練習ではないからです。実際に効く順番は次のとおりです。
- 強く読む語だけ拾う練習(最優先): 音声を聞きながら、内容語だけを書き取ります。すべてを書き取ろうとしないのがコツです。強い音を拾えれば意味は取れます。弱い部分は後から埋まります。
- 拍を手で叩きながら聞く: 強く読む語のところで机を叩きます。英文の拍の数は、単語の数ではなく強い音の数で決まります。これが体感できると、圧縮されている部分が「消えた音」ではなく「弱い拍」として聞こえ始めます。
- フレーズごと音読する: want toを単語2つとして読まず、ウォナという1つの塊として口に入れます。自分で言える音は聞き取れます。シャドーイングが効くのはこの原理です。
- 個別の音の確認は最後: どうしても引っかかる音だけ、辞書の音声で確認します。ここに時間をかけすぎないでください。
・30秒の音声を選ぶ(会議録音、ニュース、決算説明会など)
・1回目: 内容語だけ書き取る
・2回目: 拍を叩きながら聞く
・3回目: スクリプトを見て、つながっている箇所に下線を引く
・4〜6回目: 下線部を塊のまま声に出す
素材は短いほどよいです。長い音声を1回流すより、30秒を6回のほうが変化します。
聞き取りだけでなく「伝わり方」も変わる
音声変化を練習する目的は、ネイティブと同じ音を出すことではありません。目的は2つです。1つは相手の英語が拾えるようになること。もう1つは、自分の英語のリズムが自然になり、相手にとって聞きやすくなることです。
すべての単語を等間隔に、丁寧に発音した英語は、実は聞き手の負担が大きくなります。どこが要点か分からないからです。強い部分を立て、弱い部分を圧縮する。それだけで、内容が同じでも伝わり方と印象が変わります。抑揚の付け方と合わせて練習すると効果が早く出ます。
まとめ
- 知っている単語が聞き取れない原因は、語彙でも耳でもなく音声変化。
- 音声変化は5つの型に収まる。原因が特定できれば次から拾える。
- 練習はリズムから。強い音を拾う練習が先で、個別の音の確認は最後。
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