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英語の音の連結(リエゾン)と脱落|知っている単語が聞き取れない理由

2026年8月1日 · 潮田 豊幸(World Finance Edu)
著者:潮田 豊幸。シンガポール在住。日々の仕事はすべて英語です。Mentogram School of Finance の Program Director 兼 Founding Partner(授業はすべて英語、学位授与は Woolf)、フラクショナルCFO、エンジェル投資。ネイティブではない立場で、英語で20年以上グローバルの実務に携わってきました。米国公認会計士(USCPA)、INSEAD Global Executive MBA。 経歴・登壇の実績 ›

会議の録音を聞き直したら、聞き取れなかった箇所が全部知っている単語だった。そんな経験はないでしょうか。文字で見れば中学レベルの英文なのに、音になると別物に聞こえる。これは語彙力の問題でも耳の問題でもありません。単語が文の中で音を変えることを学んでいないだけです。

この現象をまとめて音声変化と呼びます。代表格が音の連結(リエゾン、英語ではlinking)と脱落です。英語が聞き取れない原因を4つに分解した記事では、この音声変化を最初の関門として挙げました。今回はその中身を具体的に見ていきます。

音声変化は「なまけ」ではなくリズムの結果

よくある誤解は、ネイティブが速く雑に話すから音が消える、というものです。順序が逆です。英語は強く長い音節と弱く短い音節の差が大きい言語で、弱い部分を短く圧縮しないとリズムが保てません。その圧縮の副産物として、音がつながったり消えたりします。

つまり音声変化はリズムの結果です。だから、単語ひとつずつの発音を磨いても聞き取れるようにはなりません。逆に、リズムの型が体に入ると、初めて聞く文でも音の変化を予測できるようになります。

音声変化の5つの型

複雑に見えても、実務で出会う音声変化はほぼ次の5つに収まります。

何が起きるか
連結(リエゾン)子音で終わる語と母音で始まる語がつながるcheck it out → チェッキラウ
脱落語尾の破裂音(t/d/p/b/k/g)が消えるnext month → ネクスマンス
同化隣り合う音が影響し合って別の音になるdid you → ディジュ
弱形機能語が短く曖昧な音になるcan → クン、for → ファ
フラップ母音に挟まれたtがラ行に近づく(主に米語)later → レイラー

この5つを知っているだけで、「聞こえなかった」が「今のは脱落だ」に変わります。原因が特定できる音は、次に聞いたとき拾えます。

ビジネスの場で頻出する実例

会議で毎日のように出てくる組み合わせを表にしました。右列は正確な発音記号ではなく、日本語話者が音の塊をつかむための近似です。

文字実際の聞こえ方
want toウォナ同化
going toガナ同化
got toガラフラップ
a lot ofアロラヴ連結+フラップ
kind ofカインダ脱落+弱形
let me knowレミノウ脱落
hold onホウルドン連結
what do you thinkワルユスィンクフラップ+弱形
as soon as possibleアスーナズパッサブル連結
first of allファースタヴォール連結
an update on thatアナップデイロンナッ連結+フラップ+脱落
I'll get back to youアイゲッバックトゥユ脱落

最後の2つのように、1つのフレーズで複数の型が同時に起きるのが普通です。だから単語単位で追いかけると崩れます。聞くべき単位はフレーズです。

脱落は「消える」のではなく「置き換わる」

脱落を理解するうえで大事な点があります。語尾のtやdは、完全に無になるわけではありません。息を止める一瞬の間として残ります。next monthのtは、発音されないかわりに一拍の空白になります。

ここを勘違いすると、自分が話すときにその一拍まで省いてしまい、かえって通じにくくなります。音は省略しても、拍は省略しない。これが話す側のルールです。

練習法:音ではなくリズムから入る

音声変化の一覧を暗記しても、聞き取りはほとんど改善しません。表は地図であって、練習ではないからです。実際に効く順番は次のとおりです。

  1. 強く読む語だけ拾う練習(最優先): 音声を聞きながら、内容語だけを書き取ります。すべてを書き取ろうとしないのがコツです。強い音を拾えれば意味は取れます。弱い部分は後から埋まります。
  2. 拍を手で叩きながら聞く: 強く読む語のところで机を叩きます。英文の拍の数は、単語の数ではなく強い音の数で決まります。これが体感できると、圧縮されている部分が「消えた音」ではなく「弱い拍」として聞こえ始めます。
  3. フレーズごと音読する: want toを単語2つとして読まず、ウォナという1つの塊として口に入れます。自分で言える音は聞き取れます。シャドーイングが効くのはこの原理です。
  4. 個別の音の確認は最後: どうしても引っかかる音だけ、辞書の音声で確認します。ここに時間をかけすぎないでください。
1日10分の練習メニュー例
・30秒の音声を選ぶ(会議録音、ニュース、決算説明会など)
・1回目: 内容語だけ書き取る
・2回目: 拍を叩きながら聞く
・3回目: スクリプトを見て、つながっている箇所に下線を引く
・4〜6回目: 下線部を塊のまま声に出す
素材は短いほどよいです。長い音声を1回流すより、30秒を6回のほうが変化します。

聞き取りだけでなく「伝わり方」も変わる

音声変化を練習する目的は、ネイティブと同じ音を出すことではありません。目的は2つです。1つは相手の英語が拾えるようになること。もう1つは、自分の英語のリズムが自然になり、相手にとって聞きやすくなることです。

すべての単語を等間隔に、丁寧に発音した英語は、実は聞き手の負担が大きくなります。どこが要点か分からないからです。強い部分を立て、弱い部分を圧縮する。それだけで、内容が同じでも伝わり方と印象が変わります。抑揚の付け方と合わせて練習すると効果が早く出ます。

まとめ

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潮田豊幸
潮田 豊幸(Toyoyuki Ushioda)
World Finance Edu 代表(シンガポール)。
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