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英語メールはAIに任せていい|人間にしかできない英語との分担

2026年9月10日 · 潮田 豊幸(World Finance Edu)
著者:潮田 豊幸。シンガポール在住。日々の仕事はすべて英語です。Mentogram School of Finance の Program Director 兼 Founding Partner(授業はすべて英語、学位授与は Woolf)、フラクショナルCFO、エンジェル投資。ネイティブではない立場で、英語で20年以上グローバルの実務に携わってきました。米国公認会計士(USCPA)、INSEAD Global Executive MBA。 経歴・登壇の実績 ›

英語のメールを1通書くのに30分かかる、という声をよく聞きます。日本語なら3分で終わる用件です。差を生んでいるのは英語力ではなく、確認の回数です。この単語で失礼にならないか、この時制で合っているか、と何度も手が止まるので、書いている時間より迷っている時間の方が長くなります。

生成AIが実務に入ってきて、この部分は事実上片づきました。英語のメールは下書きをAIに書かせ、人間は事実と機密とトーンだけを見る。ここに毎日30分を払い続ける理由はもうありません。同時に、AIには渡せない領域もはっきりしてきました。どちらに時間を置くかを決めてしまうことが、いま最も効く学習設計です。

AIに渡せるもの、渡せないもの

英語の仕事を書く・読む・話すに分けると、AIの効き方はきれいに分かれます。境目は難易度ではなく、考える時間があるかどうかです。

場面AIに任せられるか理由
社外向けメールの下書きほぼ全部定型表現の精度が高く、失礼な言い回しも避けられる
長い英文メールの要約ほぼ全部依頼事項と期日の抽出は安定している
議事録や報告書の英訳下書きまで固有名詞と社内用語は人間が直す前提
会議での発言任せられないその場で自分の口から音が出る必要がある
電話や質疑応答任せられない秒単位の反応が要る
声・語尾・話す速さ任せられない相手が受け取る印象は音でしか変わらない

整理すると、時間をかけてよい書き言葉はAIの領域、時間をかけられない話し言葉は人間の領域です。AIそのものを学習にどう使うかはAIを使った英語学習のやり方で扱っているので、練習の設計はそちらを見てください。この記事は仕事のメールの話です。

下書きを頼むときは3つを指定する

「英語のメールを書いて」とだけ頼むと、丁寧すぎて長い文が返ってきます。そのまま送ると、用件がどこにあるか読み取りにくいメールになります。一度で使えるものを出させるには、次の3つを必ず入れます。

指示の例
「取引先の経理担当者に送る英語メールの下書きを作ってください。用件は、8月分の請求書に金額の誤りがあったので再発行を依頼すること。期日は今週金曜。丁寧だが簡潔に、4文以内で。件名も付けてください。」

返ってきた文が長ければ「もっと短く、3文で」と一度言い直します。やり取りは2往復までで終わるはずです。それ以上かかるなら、指示の3点のどれかが抜けています。

送る前に人間が見る3点

1. 事実

金額、日付、社名、部署名。AIは文脈から「それらしい」数字や名前を補うことがあります。数字は必ず元資料と突き合わせます。決算や監査のやり取りでは、この確認の重みがさらに上がります。監査対応の英語でも書いたとおり、出した数字が少しずれるだけで往復が増え、結局は時間を失います。

2. 機密

社内の未公表の数字、顧客名、契約条件を、そのまま外部のAIに貼らない。会社の利用規程を先に確認して、貼ってよい範囲を自分の中で決めておきます。金額をXに置き換えたり、社名をA社としたりしてから貼っても、下書きの質はほとんど落ちません。落ちるのは事実の正確さだけで、それは元の資料を見ながら自分で埋めます。

3. トーン

AIの英語は、日本語話者の感覚より一段強く出ることがあります。特に催促と指摘の文です。We need this by Friday. と We would appreciate it if you could send this by Friday. では、受け取る側の印象がかなり違います。相手との関係と、その案件がどこまで切迫しているかを知っているのは自分だけなので、ここは選び直します。逆に、日本語から訳すと弱くなりすぎて用件が伝わらない場合もあります。強めたいときは please を足すのではなく、期日を文の前の方に置くと届きます。

浮いた時間は話す練習に回す

メール1通で20分浮くなら、週に1時間から2時間は空きます。この時間を単語帳に戻すのはもったいない使い方です。書く力をAIで補えるようになった以上、伸ばす価値が高いのは、その場で音を出す力の方だからです。会議で黙ってしまう問題は、AIでは解決しません。

1日10分の配分の目安
・7分:リズムと強弱。自分が送った英文メールを1通選び、声に出して読む。相手に届いてほしい語(期日、金額、条件)を強く、少し長めに言い、残りは軽く流す
・2分:文末。語尾を下げて言い切る。上げ調子で終えると、内容が正しくても自信がないように聞こえる
・1分:個々の音。気になる単語だけ直す

目指すのはネイティブと同じ音になることではありません。期日と条件が一度で伝わること、落ち着いて聞こえることの2つです。

録音して聞き返す手順は英語スピーキングの一人練習方法にまとめてあります。相手がいなくても、書いたメールがそのまま練習素材になります。自分の言葉なので、意味を考えずに音だけに集中できるという利点もあります。

書く力は落ちないのか

この使い方をすると英語が下手になるのでは、という懸念はよく聞きます。実務の観点では、読まずに丸投げして送る使い方さえしなければ問題になりません。AIの下書きを読み直す作業は、質のそろった英文を毎日読むことと同じです。自分では思いつかない言い回しに、毎日3回か4回は触れることになります。

ひとつだけ足すなら、気になった表現を1日1つ書き留めておくことです。to be clear on timing、as discussed、subject to your confirmation のような短い接続の言葉は、そのまま会議でも口から出せます。書き言葉から拾って話し言葉に移す。これがAI時代の語彙の増やし方だと考えています。

まとめ

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潮田豊幸
潮田 豊幸(Toyoyuki Ushioda)
World Finance Edu 代表(シンガポール)。
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